星の瞳なイラストその2>奔堕さんまたまたありがとう♪


illustrated by 奔堕焦慈  (B組・少女漫画研究会)


    旅立つ貴方へ。
                             
 E組   さと   


「手、出してみて」
「え?」
彼の言葉に戸惑いをみせながらも彼女が手を差し出すと、その上にそっと小さな箱が置かれた。
「――――――――これって・・・」
ビロード製の小箱。その中に何が入っているのか、彼女にも容易に想像がついた―――ものの、やはり驚きは隠せない。
「中学の時は学ランだったけど、ここって普通のボタンだろ?そのかわりにね。
――あ、いや、かわり、ってだけじゃ、ないんだけど。」
そういって照れる彼を見て彼女は小さく笑った。既に、そのブレザーの制服からもボタンはほとんどもぎとられている。
彼と彼女の仲は、付き合い始めて2年ということもあり、公認として広く知られているが、それでも、彼の人気は非常に高く、卒業式ともなれば玉砕覚悟の女生徒に囲まれてしまうのも仕方ないのだろう。
「それより、開けてみてよ」
「あ、うん」
ぱこ、と小さな音がして箱が開かれると、彼女が予想した通りのものが顔をのぞかせた。
陽光に反射して、呼び名の通り黄金色に輝いているそれを、そっと指でつまみあげると、そのまま左手の薬指にするりとはめこむ。
「ぴったり、みたい」
「――よかった。サイズが合わなかったらどうしようかと思ったよ」
「・・・きれい・・・」
手を光の方向にかざして、輝きを――重みを、かみしめるように確かめる。
「あたし、あなたに色々なものをもらってばかりね。本当ならあたしの方がおせんべつをあげなきゃいけなのに・・・」
「あはは、気が早いよ。まだ合格したかわからないんだし、受かってたとしても向こうにいくのは4月からなんだから、あと1ヶ月はあるよ」
「あなたなら、きっと合格しているわよ」
・・・そして、仙台に行ってしまう日は、刻一刻と迫っている・・・飲みこんだ言葉の意味を再確認する。
彼が夢を追うために選んだ進路は、2人の出会ったここより電車で数時間かかる土地での進学だった。
お互いの夢へと続く道。その妨げをしたくは無いと思いながらも、離れ離れになることへの不安は拭い切れない。
感情を理性で押し殺しがちである2人だけに、隠し事をせず、正直な気持ちをぶつけ合うことにかなりの時間を費やした。
・・・そして。
「ありがとう」
「え?」
「指輪。ずっと、大切にするから」
「・・・・・・うん。」
彼女がはじめて彼に貰ったもの。
月なし夜には星が降りてくること。
すべての星の中でもいちばんにかがやくシリウスのこと。
そして・・・その星のかけらをくれた。
あのときから、彼女も彼も成長したが、それでも変わらないものがきっとある。
そうしたものたちが・・・そしてこの指輪が、離れている間も彼女を支えつづけるに違いないから。


「おーい、久住ー!」
「香澄ぃ!あ、いたいたぁ、そろそろ行こ!」
「あれ?わあっ、邪魔だった?」
友人たちの声にはっとしたふたりは慌てて一歩後退した。
「あははははっ、ごめんねおケイ」
「ごめんごめん、泉さんと森下さんまってるよな。じゃあ、行こうか」
友人たちに囲まれながら校門へと向かって歩き出す。
ふと、彼女は先刻から左手に握り締めたままの小箱の存在を思い出して、立ち止まった。
中に入っていた物も、この手のひらだけで覆ってしまおうと思えば簡単に出きる程度に小さな物。けれど・・・。
―――今日のことは、きっと一生忘れない―――
「香澄ぃー、何やってんのお?おいてくよー!」
「あっ、うん!今行くー!」
彼女は慌ててそれをポケットにしまいこむと、先を行く友人たちのの歩みに追いつくべく駆け出した。

まだ、「春」と言うにはやや早い昼下がり。彼らの去った後、優しい風が駆け抜けていった。

                                             (了)



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ザ・補足
すみませんホントは漫画描くつもりだったんですが激しくページオーバーしそうでショートショートにしました〜・・・で、自分の文才のなさを思い知りました(死)。
言葉遣い・比喩などかなり怪しげですが何分これが生まれて初めてのショートショートなんで見苦しいのはご容赦下さい^^;
さらにさらに。これ、「星の瞳のシルエット番外編・エンゲージ」を読んでいないと訳わからないかと思われます。重ね重ねすみません。嗚呼・・・(滝汗)。


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